運動不足解消には最適な運動習慣、日常生活の見直しに加えて、家でできる簡単なエクササイズも効果的です。在宅勤務やリモートワークで外出の機会が減ってしまった、ジム通いが困難といった方にもおすすめのエクササイズや、運動不足の悪影響やその対策についても理学療法士である筆者が解説します。
■運動不足とは
まずはどのぐらいの運動量に達しないと運動不足となるのか、年齢や性別によっても異なる点などを解説しましょう。
・運動不足とは?
週に150分以上の緩い運動、もしくは75分以上の激しい運動をしないことを運動不足である*と世界保健機構(WHO)が2018年にガイドラインで定義しました。世界の37%の人がこの報告では運動不足であると言われています。このガイドラインの中では、運動の強度は高くても低くても構わないので身体活動つまり運動を取り入れるように推奨しています。
(*引用:WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour(運動・身体活動および座位行動に関するガイドライン))
・まずはあなたの運動量を数値化してみよう
まず初めに運動は種類やその激しさにより、運動の強度が異なります。そこであなたが行なっている、あなたがこれから行う運動の強度を数値化して目安を知る必要があります。運動強度はMets(メッツ)と呼ばれる単位で表されます。
Metsは安静にしている時の酸素摂取量3.5ml/kg/分を1としたときに、その運動で何倍のエネルギーを消費できるかという運動強度を示した単位です。テレビを座ってみる、車を運転するといった活動は1Mets**と表されます。その他の主な活動の運動強度は以下になります。
・立位、皿洗い:1.8Mets
・ゆっくり歩く:2.0Mets
・普通歩行:3.0Mets
・フロア掃除、掃除機:3.3Mets
・自転車に乗る:4.0Mets
・早足で歩く:5.0Mets
・軽いジョギング:6.0Mets
もっと詳しい日常生活活動の運動強度を知りたい方はこちらを参考にしてください。
(**運動強度とエネルギー消費量:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネットから引用)
またエネルギー消費量(kcal)は以下の式で求めることができます。
エネルギー消費量(kcal)=エネルギー代謝率(RMR= 1.2 × (Mets-1):kcal/kg/時)×(時間:時)×(体重:kg)
例えば体重50kgの人が軽いジョギング(6Mets) の運動強度で30分(0.5時間)運動したとしましょう。この時のエネルギー代謝率(RMR)=1.2×(6.0Mets−1)=6kcal/kg/時間となり、エネルギー消費量は6(kcal/kg/時間)×0.5(時間)×50(kg)=150kcalとなります。このようにMetsを知ることによりエネルギー消費量がわかるのです。
・必要な運動量は年齢によっても異なる
WHOのガイドライン*では5−17歳の青少年、18−65歳の一般成人、65歳以上の成人、妊娠中、産後の女性、糖尿病や高血圧などの慢性疾患を持っている人に分けて運動の量、強度をそれぞれに分けて推奨しています。例えば、5−17歳の子供の場合には、1日最低でも60分の身体活動、高強度の有酸素性の活動とともに、筋肉および 骨を強化する活動を週に3日以上組み込むこと、18−65歳までの大人の場合には少なくとも週に150−300分の中等度から高度の身体活動を行うこと、妊娠中、出産後の女性に関しては少なくとも週に150分の低〜中等度の身体活動、が推奨されています。その他の詳しい内容について知りたい方は、ガイドラインを参考にしてください。
(*引用:WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour(運動・身体活動および座位行動に関するガイドライン))
■運動不足が引き起こす影響
次に運動不足になるとどうしていけないのか、運動不足が引き起こす悪影響について詳しく解説しましょう。
・体力や筋力が衰える
運動不足が引き起こす悪影響の一つとして体力や筋力の低下が挙げられます。また体力筋力の低下は、肥満の原因になるとも言われます。高齢者においては運動をすることで寝たきりや死亡を減少させる効果があると言われており、さらに後述しますが生活習慣病やガンの発生、メンタルケアなど心身の健康を維持するためにも重要です。(***)子供の場合には健全な心身の成長を促し、運動習慣をつけるのに役立ちます。
(***厚生労働省HP:身体活動、運動より引用)
・生活習慣病を引き起こす
運動不足の悪影響により体力筋力が衰えると肥満になり、生活習慣病の原因になります。生活習慣病は高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、肥満などが主なものですが、全ての疾患において運動不足が原因として挙げられます。またガンの発生にも運動不足が関係していると言われています。(**)
また生活習慣病は心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気を引き起こす可能性があり、生活習慣病を予防することはとても大切です。あなた自身が健康で豊かな生活を送るためにも、日常に運動を取り入れて生活習慣病の予防をすることが大切です。
(****健康づくりのための運動の効果:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネットから引用)
・膝や腰の痛みを引き起こす
運動不足による肥満、体力筋力の低下は、姿勢不良や関節への負担も増大させます。姿勢不良は腰痛を引き起こし、体重の増加は膝関節への負担が大きくなり痛みの原因となってしまいます。そして関節への衝撃を和らげるための筋力の働きも弱まってしまうため、腰と膝だけではなくほかの関節にも負担がかかるため、注意が必要です。
・メンタルにも大きく影響する
運動不足は身体面だけではなく、精神面にも大きく影響を及ぼします。運動することでリラックス効果をもたらし、屋外での運動はコミュニティの形成やストレス発散などのメンタルヘルスにも大きく影響しています。高齢者の場合には運動習慣をつけることにより認知症の予防にも大きく役立っています。
■運動不足解消法その1 生活習慣の見直し、運動習慣
それでは実際の運動不足解消法、中でも生活習慣に関連したものについてご紹介します。日常生活の見直し、運動習慣をつけることは大変重要なので、日常生活に取り入れていきましょう。
・運動習慣をつけよう!まずはウォーキングから
ウォーキングは特別な道具や施設の必要がないため、最も始めやすい運動のひとつと言えるでしょう。ウォーキングは有酸素運動であり、スピードを自分で調節することが可能なため、運動強度が簡単に変えられます。また、移動手段として日常生活の上で取り入れやすいのも特徴です。通勤途中でひと駅分歩く、車なら少し離れたところに駐車して歩く、など日常生活にひと工夫するだけで運動習慣をつけることができます。
・ジムに通って運動するのも◎
ジムやスポーツ施設などでの運動は、運動しなければと気持ちを奮い立たせることができ、運動を行うモチベーションに繋がります。例えば友人と同じジムに入会して楽しく運動を始める、というように運動を続ける目的があるというのも良いでしょう。またジムやスポーツ施設などは、運動のための設備が整っており、運動をあまりしない人でも運動を始めやすいでしょう。
・グッズやアプリを試してみよう
最近ではエクササイズのアプリやテレビゲームのソフトを使って運動することもできます。スマートフォンやテレビゲームは現代社会において手に取りやすく身近な機器です。運動習慣の導入、継続にも使いやすいデバイスと言えるでしょう。アプリなどで運動の記録をしたり、消費カロリーもすぐに見ることもできるため、運動を続けるモチベーションにもなります。
■運動不足解消法その2 自宅でできるユミコア流エクササイズをご紹介
最後に運動不足解消法に加えて、自宅でできるエクササイズ、ユミコアがオススメする在宅でのエクササイズを紹介します。天候などのさまざまな理由で、屋外での運動ができなくても、室内で運動不足を解消することができます!
・エクササイズの前後に最適!太ももストレッチ
運動不足解消に運動を始める前に、まずは体の中の大きな筋肉太ももの筋肉をストレッチする事から始めましょう。
【太もものストレッチ】
1.膝立ちの状態から右足を前に出し、膝の真下に踵を置いたら右足を外側に一歩移動する
2.左足を後ろに引いてつま先を立てる
3.左膝を曲げて右手で左足をつかみ、踵をお尻に近づける
4.お尻を前に押し出すように前ももを伸ばしていく
5.身体は正面に向けて頭が落ちないように注意する
6.反対も同様に行う
・コアマッスルトレーニングで代謝アップ
骨盤底筋はコアマッスルの一つであり、特に女性のボディラインを保つ、もしくは改善する上で非常に重要なものです。そして骨盤底筋は膣や肛門、膀胱などと靭帯を通じて連結しており、骨盤底筋を鍛えることで尿もれや子宮脱、生理痛の軽減、さらにはぽっこりお腹を引き起こす内臓下垂といったさまざまな女性のトラブルを避けることができます!もちろん筋力がアップすることで代謝もアップし、カロリー消費を促すことができます。ここでは呼吸を使った骨盤底筋のエクササイズをご紹介します。
【膣呼吸で膣力アップ!】
1.まず両膝を立てて仰向けに寝ます。両膝の間は拳1つ分あけるようにして、膝の皿は真っ直ぐ天井に、つま先はまっすぐにしておきます。
2.親指と人差し指で三角形を作り下腹の上に置きます。鼻から息を吸って置いた手の下、下腹がパンパンになるように息を吸い込みます。
3.息を吐きながら下腹が薄くなるようにしっかりと吐く。この時、膣の入り口をおへその背中側にある仙骨のあたりに引き込むようにします。
◎目安回数:5回程度
・横隔膜呼吸でコアトレーニング、リラックスの両方が可能
コアマッスルの一つである横隔膜(おうかくまく)は横隔膜呼吸で鍛えることが可能です。横隔膜呼吸はトレーニングだけではなく、リラックス効果も期待できます。是非試してみてください!
【横隔膜呼吸でトレーニングとリラックス!】
1.両膝を立てて、仰向けの姿勢で寝ます。
2.おっぱいの下あたりの左右の肋骨に手を置きます。
3.息を吸って吐いた後、手を置いている肋骨をロックするようにして、次に背中に呼吸が入るように息を吸います。
4.息を吐くときも背中側の空気を押し出すように、手を置いた胸の前はロックしたまま行いましょう。
◎目安回数:10回
■まとめ
運動不足は現在、全世界規模で大きな問題となっており、世界の3人に1人は運動不足であると言われています。運動不足は年齢や性別、身体状況によってもその基準量は異なりますが、運動の強度も大変重要な指標となっています。座っている時の酸素消費量を1として、他の運動にはどのような強度があるのかをMets(メッツ)という単位で表され、推奨される運動の種類の把握や消費カロリーの計算にも役立ちます。運動不足は身体状況によりさまざまな悪影響を及ぼし、体力や筋力の低下だけではなく生活習慣病やガンの発生のリスクを高めてしまいます。他にも関節の痛みやメンタル面にも大きく影響するため、運動不足の解消は非常に重要なのです。運動不足の解消には運動習慣をつけることが重要であり、ウォーキングのような有酸素運動と共に筋力をつけるエクササイズを合わせて行うことで、代謝量の増加や体力増加にも効果的です。運動不足を解消して健康でより良い日常生活が送れるように、運動習慣を取り入れるようにしましょう!
YumiCoreBodyオンラインレッスンでは、運動不足でお悩みの方に自宅で始められる運動不足解消のためのエクササイズのプログラムを配信しています。特に体幹の筋肉であるコアマッスルに注目したプログラムは筋力体力の向上だけでなく、運動の際の安定性、ボディラインを整えるのにもオススメです。さらにオンラインレッスンなら、ご自分の好きな時間に好きな場所で、時間や場所を選ぶことないため、無理なく継続して行っていただくことが可能です。
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投稿者プロフィール
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YumiCoreBody編集部
理学療法専門学校を卒業後、理学療法士として整形、神経内科、脳外科、心臓血管外科など様々な症例を担当する。理学療法士、呼吸療法認定士の資格を保有。